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Yuko Bourgogne Raisindor

冬の終わりを祝う、クレープ祭。

2月2日は、シャンドラー(La Chandeller / fête des chandelles)の日。

スイーツが大好きなフランス人たちは、大人も子供も皆こぞって家庭で手作りのクレープを頬張ります。

日本からこちらに来たばかりの頃は、意味も分からずにそれを面白い習慣だと思って、舌鼓に賛同していました。

まん丸の形、こんがりときつね色に焼けたクレープ。 - それはまさに、恵まれた『太陽』のイメージ。 そう考えられて、実のところクレープは冬の終わりを象徴するお菓子だったのです。






それぞれの国の、冬の終末の祝い方。新たなシーズンへの準備。

日本では節分に豆をまき、フランスではクレープを頬張る習慣。

日本でも立春の前日、2月3日に『節分の豆まき』をする習慣があります。 穀物の種には邪気を払う力があり、平安時代からこの習慣は始まっていたと言われています。

節分とは元来季節を分ける節目という意味。昔は年に4回節分があり、そのうちでも冬から春への節目は一年の始まりと考えられて最も重要視されていたため、2月3日の節分だけが現在に引き継がれたといいます。

実際に春の到来を肌に感じ始めるのは3月の春分の日。

けれど、2月初旬に土の中ではもう、生物たちの芽吹きの準備が始まっているのです。

海を越えてもそれは同じ。

フランスでは古代ケルト人たちが豊穣の女神ブリジットに祈願して、2月1日にたいまつを振りかざし、これから種まきを行う畑を走り回ったといいます。

豊穣の女神が土を浄化し、新たな豊作が期待できるように…。

その習慣は5世紀になると教会の行事に結び付き、472年2月2日、法王Gélase Ⅰ世はたいまつを翳した巡礼の行列を催します。そのたいまつは後の時代に薄暗い教会の中を照らす明かり、Chandelle(ロウソク)へと変わっていく…。

クレープ祭りの『シャンドラー』は、そのシャンデル(Chandelle=ロウソク)から派生しているそうです。

そして今年の収穫に向けて新たな農業サイクルが始まる今、ストックしていた小麦粉は惜しみなく使うことができるわけです!

小麦粉ベースの身近な材料で、家庭のお菓子として広く親しまれているクレープ。

小麦粉、砂糖、卵、牛乳、サラダ油(お好みによりバター)があれば、簡単にどの家庭でもクレープが出来ます。フライパンに少し多めの油を敷けば、円の縁取りがコンガリと焼けて、サクサクな触感としっとりした口どけが、なんとも絶妙な幸福感を味わえます。 少し生地を厚めに流して、パンケーキのようなバリエーションもお勧めです!

2月2日にクレープを焼く時、コインを握っているとその年リッチになれるという言い伝えもあるほどです。


日本でも年齢の数だけ豆を食べると、一年健康に過ごせるという言い伝えがありますね。

節分の日、日本では大豆をまいて邪気(鬼)を払い、福を呼び込む。 フランスでは、太陽のような、コンガリと黄金色のクレープを焼いて、新たな農業サイクルを迎える。 欲張りな人は手にそっとコインを握って、今年はちょっぴりリッチになれることを期待して…。

世界の反対側で、違ったやり方で、冬の終わりを祝う。何だか楽しいですよね。

大学時代に比較文化を受講していた私は、そんな暮らしの文化の違いも面白くて好きです。




著者 裕子ショケ

ブルゴーニュ・レザンドール

Bourgogne Raisin d'or

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