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Yuko Bourgogne Raisindor

【ドメーヌ・ローラン・ルーミエ】オンライン訪問 質問&回答集

更新日:2021年4月24日




2021年4月19日のドメーヌ・ローラン・ルーミエ訪問の際に、愛好家の方々から寄せられた『造りの個性』に迫る質問と、生産者から直接お聞きした回答集です。



今回で第三弾となりましたVELTRA社協賛/ブルゴーニュ・レザンドールのZOOM生中継でのドメーヌ訪問は、残念ながら回線不調に見舞われ、当初イメージしたものとはかけ離れた内容に散っていきました...。

人見知りで中々お会いできないローラン氏が(おそらくコリーヌさんの計らいでサプライズで登場し)ご夫婦でご挨拶くださったりと、現地ではとても良くしていただいていたのですが、その部分さえも完全に映像から落ちてしまっていて、皆様にお届けすることができず残念です...。


ロックダウンに入り村内での回線使用率が高かった為か、民家やドメーヌが進めている工事が起因したのか...。回線の「確保」の難しさと突発性を改めて思い知らされた次第です、、


今回は特に、過去にガイドさせていただいたお客様や、オンラインのリピーターのお客様が多かったため、「いつもより一歩踏み込んだ興味」に応じた話題に持ちこめるよう、基本情報は予め用意し、資料を豊富に投入したのですが、回線が弱い中での画像挿入は逆に負担が大きく、全てが裏目に出てしまった...という結果になりました。


ご参加者全員にご返金という形でお詫びをさせていただいたものの、お忙しい中わざわざお時間を割いてご覧くださった皆様に、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。


また、企画の段階から沢山のサポートを施してくださったベルトラ社が、快く迅速にその対処をご承諾くださったことにも感謝の意が絶えません。


コロナ禍で国際間の移動が難しい中、ドメーヌと愛好家の絆を繋げたいという意思のもとで企画したため、お忙しい中にも快く合意してご協力くださったコリーヌ・ルーミエさんのご好意を無駄にしない意味でも、形に残したいと思い、当日の質問と回答をカテゴリーごとに纏めてみました。


皆様のご質問に、少しでもお答えできていれば幸いです。






【ドメーヌ・ローラン・ルーミエの『造り』に関して】


◆ワイン造りで一番大切にしていることは何でしょうか?銘柄ごとに教えてください。

◆ドメーヌ・ローラン・ルーミエならではの「造り手としての個性」は、ワインにどのように表れているのでしょうか。またそれを出す為にどのような工夫や努力をしているのでしょうか。


『繊細で自然そのもののワイン』を造るということを何より大切にしています。

「シャンボール」といえば繊細でエレガントなワイン、言うなれば軽いワインなので、醸造や樽使用で力強さを与えようとは考えていません。銘柄によって造りを変えることはしていません。


ただ、シャンボールPCレ・シャルムだけは、もともとの酒質が男性的で力強く、トーストされた樽の効果がワインによく溶け込んでしっくりと噛み合います。そのため、ルソー(昔から懇意にしている樽業者)の「アレグロ」というタイプの樽の比率を高くしています。


アレグロは、ルソーの中でもトースト香が強くつくタイプのもので、逆にボンヌ・マールのような、グランクリュであっても余韻の長い繊細なタイプのワインには適さず、同社のトラディショナルタイプの樽を多く使っています。



醸造はいたってオーソドックスで、ローランが父や祖父から継承したものです。特別なことはしておらず、ブドウの自然の力に導かれるように醸造しています。

収穫は特に遅積みというわけでもなく(潜在アルコール度が高くなることを求めてブドウの熟度を待つわけでもなく)酸や糖のバランスを見て決めています。

毎年100%除梗し、破砕はせず、低温浸漬を含めて仕込み期間は15~17日です。シンプルで一般的な方法です。

樽を除けば、アペラシオン毎の工夫はしていません。


◆ピジャージュとルモンタージュの使い分けはどのようにしているのでしょうか?


まずピジャージュですが、除梗したブドウを醸造タンクに入れた直後は、まだブドウが顆粒のままなので、多少潰して果汁を解放する必要があります。そのため、初期の段階では毎日ピジャージュ(櫂入れ)し、仕込み桶の中の温度を毎朝計ります。


ルモンタージュ(液循環)は、二つの方法を使い分けています。




酵母が増えて活発に活動するのを助ける意味で、最初の段階ではわざと空気(酸素)を含ませながら上から勢いよく振りかけていきます。













第二段階でのルモンタージュは、順調に発酵が進んでから行うもので、基本的にはピジャージュと切り替える形で行い、小さな穴の開いたパイプをタンク内に入れて、その中にホースを差し込み、果皮をタンクに残したままマストだけを引き込んでタンクに戻します。つまりタンク内のマストを優しく均一に混ぜていく作業です。







◆次世代を担うフランクさんは、どのようなワインを造りたいと思っているのでしょうか。



ヴォーヌ・ロマネのドメーヌ・ブリュノ・クラヴリエールで修業したこともあり、ビオディナミにとても興味を持っています。将来はドメーヌに導入したいと考えているようです。


それに対してローランは特に反対していません。

毎夕、『収穫者の間』に集まって親子で話し合っています。フランクが新しい意見を言ってもぶつかり合うことはありません。一緒に前向きに考えていく方向で受け入れています。


しかし、ビオディナミの導入は慎重に少しずつ進めなければなりません。ビオディナミによる栽培ではプレパラシオンと言って特有の方法で準備した牛糞やハーブ液なども必要となり、そのための機材も必要になってきます。まずはオート・コート・ド・ニュイの一部の区画から、実はすでに今年から導入しており、様子を見ながら発展させていく予定です。本格的にビオディナミを導入するとなればとても奥深い話になりますので、まずは基本ラインから始めています。


◆個人的にブルゴーニュのピノノワールは和食との相性が最高だと思っています。生産者の方もそうしたことは意識されてるのでしょうか?


(こちらの質問は残念ながら後日チャットの記録を見て気付いたため、中継中にご本人に投げかけることはできませんでした。ガイドの視点からご回答します。)


実はローランさんは、オーソドックスなブルゴーニュ料理しか好まない、コテコテのブルゴーニュ人です(笑)そのため、1月に訪問したドメーヌ・クロード・デュガのベルトラン氏を例にとってご回答致します。


「以前来日した際、2017年の自分の色々なワインを寿司に合わせたとき、目から鱗というほどの素晴らしい体験をしました。これまでの生涯で最高と言ってもいいほど相性が良いと思ったのです。日本料理は素材を大切にする料理で、私のワイン造りの信念にも合致します。ピュアで繊細なブルゴーニュのピノノワールは、素材の美しさを生かして作られた和食にピッタリなのだと知り、心から感銘しました。」




【地球の温暖化対策についての質問】


◆古樹は霜害を逃れやすいと聞きますが、本当ですか?


(こちらの質問も、後日チャットの記録の中で見つけたため、中継中ご本人に投げかけることはできませんでした。すみません、、)


色々な生産者からお聞きする限り、若樹の方が春先早くに芽を開き始めるため、成長が進んでいる分、霜害に遣られるリスクが高くなります。古樹はスタートが遅いため、タイミング的に霜害を逃れやすいです。

また、先日4月上旬に襲った霜害についてドメーヌ・クロード・デュガのベルトラン氏に現況をお聞きしたところ、

「ジュヴレ・シャンベルタンではそれほどの被害を受けずに済んだのですが、グリオットの「若樹」はやはり多少の被害を受けました。」とのことでした。


一方、国家機関である原産地呼称名称AOCでは、気候温暖化に応じて対策が話し合われ、遅霜に対抗するために成長の遅いクローンを奨励するなど、色々な角度から方法が問われています。

また、以前は秋~冬にかけて行っていた剪定のタイミングを遅らせて、翌年の成長のスタートを遅らせる工夫も多くのドメーヌで行われています。



◆何年か前にドメーヌ・ローラン・ルーミエを訪問した時、コリーヌさんがワインの「繊細さを大切にしている」というお話をされていました。地球の温暖化が進む中で、その「繊細さ」を守る努力は何かしているのでしょうか。


今のところはまだ特別なことはしていませんが、将来は必要になってくるでしょう。


2018年のように収穫直前に猛暑が続き、潜在アルコール度が瞬く間に上がってしまったような年は、私たち生産者にとってはとても難しい年でした。例えばクロ・ヴージョ(中継最後に訪れた畑)でも潜在アルコール度がすでに14度に達していたため、醸造中にアルコール度が上がりすぎないよう注意を払い続けました。


◆あなたのドメーヌで過去数年間で一番良いヴィンテージは何でしょう?


2015年です。2015年は優しく大らかなヴィンテージです。





私の記憶する限り、中継中のQ&Aは上記に全て盛り込まれているかと思います。


地球の温暖化にご興味を持たれている方が多いようでしたので、ちょっとしたプラスの情報として中継でも補足しましたが、

現在「AOCの法律を修正する」ことが話し合われていて、例えばワインが重くならない工夫として、規定を上回らない低い比率であれば他の品種を畑に混植して基本品種に混ぜてもそれまで通りのアペラシオンを保つことができるなど、他品種の導入についても様々な可能性が検討されているようです。(例えばシャルドネの畑にアリゴテを混植する、ピノ・ノワールの畑にセザールを混植するなど。)


私が回線難で苦戦している間も、コリーヌさんは私が焦らせないよう優しく微笑みながら支えてくださいました。


中継後は、折角伸びてきたブドウの芽を食べてしまう緑や茶色の幼虫の害が広がっているとのことで、夜8時からまたチームで畑に出て、一匹々々手で捕まえて退治しなければならないとのことでした。(日中は土の中に隠れているので効果が低いとのこと。)



※詳しい情報を検索されたい方へのキーワード:

chenilles mange-bourgeons/chasse aux noctuelles

(日本語にするなら、ヤトウムシ(夜盗虫)狩り、ヤトウムシ退治といったところでしょうか。) 






中継の質的には"没"で終わってしまったものの、皆様とドメーヌとの繋がりが深まれば嬉しいです。


次回は5月31日にヴォーヌ・ロマネのドメーヌ・ミシェル・グロを訪問する予定です。


最終回線調査のタイミングも考えながら再度行程を見直し、より高い確実性を求めて臨む予定です。


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