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  • Yuko Bourgogne Raisindor

ドメーヌ・ジャック・カリオン訪問【参加者との対話式オンライン】~モンラッシェ地区のテロワールとワインの個性~

更新日:2022年7月1日




1520年からピュリニー・モンラッシェ村に定着し、ワイン造りに携わってきたカリオン家。2020年のヴィンテージで悠に500周年を祝います。


真に生粋の「ピュリニー人」と言えるジャック・カリオン氏がオンライン企画に快く応じてくださり、ブルゴーニュ・レザンドール主催/VELTRA社協賛にて、2022年6月27日(月)、生中継のオンライン・ワイン会を開催しました。


当日朝は雨模様。それでもオンライン前後の2時間だけが、思わせぶりな『曇り』のマーク。

これはもう、予報に賭けるしかない。畑中継は開始20分のみ。そうでなくてもヴィニュロンたちは最高に忙しい時期。


ここのところ突風や雷雨が相次ぎ、加えてピュリニー村で大々的な水道工事が勃発(!?)したりと、心配事が多かった中...無事に開催・終了!安堵と嬉しさはひと際でした。



一人モンラッシェの畑に到着。それまでフロントグラスを濡らしていた最後の水滴もなくなり、雨雲が明るい空と融和してスーっと横に広がりました。


ブルゴーニュにお客様をお迎えする時も同じ気持ち。晴れた空は天からの一番のプレゼント。思わず「ありがとう」と言いたくなるのです。


いつも時間切れで取材ビデオを生かしきれなかった反省を生かし、オープニング15分前から資料としてオリジナルVTRを流しました。


◆ カリオン氏と訪れた4つのテロワール(プルミエクリュ シャン・カネ、ペリエール、ルフェール、グランクリュ ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ)


◆ カリオン家500周年(ジャック・カリオン氏の紹介。ドメーヌの位置、醸造所&セラー)


取材ビデオを少しずつ繋げてテロップの説明を入れ、音声を消してストーリーとして御覧いただけるようにしてみました。(BGMはLudovico Einaudi『Nuvole Bianche 白い雲』『i giorni あの日々』。趣味のピアノを入れています^_ ^;)


ビデオはFacebookに公開しています。(6月30日掲載分)



今回はギャラリーヴューを活用し、常に参加者の画面をご覧いただきながら生産者にお話していただきました。


真剣に耳を傾け、時にはメモをとっていらっしゃる日本のお客様の様子を見て、ジャック氏も波長が合ったようで、俄然はりきってご説明くださったように思います。



家族が一丸となって頑張ってきたドメーヌ、そしてこれからも家族で頑張っていくドメーヌ。ドメーヌ到着時にはジャック氏だけでなく、奥様のシルヴィアさん、長女のアリスさんもサプライズで登場してくださいました!


この日は学校に行っていて不在だった次女のシャルロットさん(14歳)も、霜害の恐れがある時には夜中の3時に起きて両親や従業員と共に畑に行き、ブドウ樹とその環境を温めるために畑に設置されたロウソクに点火していくのだそうです。点火に2時間、消火にまた2時間、学校がある日も例外ではありません。

「大変ですね。」

と声を掛けると、

「選択肢はありませんから。」

とシルヴィアさん。長女のアリスさんも横でそれを聞きながら異論はなさそう。

「ブドウを守ることを何よりも優先しなければならない」という意識は、子供心にも強く認識されているようです。










生産者へのメッセージと質問



◆ 質問とメッセージの皮切りは、ブルゴーニュ利き酒騎士団のK.O.様。

2002年にシュヴァリエ叙任式のため、初めてブルゴーニュにいらした際にドメーヌ・ルイ・カリオンを訪れたとのこと。


当時は父ルイ・カリオン氏が当主でしたが、80年代からすでにドメーヌで働いていたジャック氏もおそらくその日は一緒お迎えしたはず。悠に20年ぶりの再会です!



2006年ルイ氏引退後、2010年にドメーヌは二つに分かれ、兄弟が夫々「ジャック・カリオン」「フランソワ・カリオン」の名でドメーヌを経営するようになりました。K.O.様がルイ・カリオンを訪れた際に試飲をしたセラーは今日ジャック氏に引き継がれ、私が中継で訪れている正にこの場所だと分かり、20年前を懐かしく思い出されたようでした。


オンラインを機に2009年のPCレ・ペリエールを開けて愉しんでいらっしゃるK.O.様の様子を御覧になって、ジャック氏はとても嬉しそう。2009年は今ちょうど飲み頃とのこと。4本購入したうちの3本目とのことなので、大事に寝かせながら時折開けて熟成具合を確認していらっしゃったのでしょう。シュヴァリエ利き酒騎士団のメンバーとして、鏡のような方です!


また、当時のドメーヌ訪問を振り返り、樽試飲ではどれも美味しくてワインの格差が分かりづらかったとのことですが、以来、ルイ・カリオンのワインを色々と飲んでみて、瓶詰め後のワインはグランクリュが圧倒的に美味しく感じられたのだそうです。


ジャック氏曰く、「樽熟成中のワインはあくまで未完成で、成長段階の一面でしかありません。また二酸化炭素が含まれているので試飲が難しいのも事実です。」

ワインが必要とする時間を待って、完成と認められる成熟に達してから瓶詰めをします。格差が明確になるスタートラインはそこからと言っていいでしょう。


他にも、


◆ 2002年当時から、ジャックさんが造られるようになりました現在までの、ワイン造りの変化や、ワイン造りを取り巻く環境の変化について(シュヴァリエ利き酒騎士団K.O.様)


◆ どのようなイメージでワイン造りをしていますか。(渋谷のソムリエK.Y.様)


◆ 白ワインを造っていて、ワクワクすることは何ですか。(K.N.様)


◆ 今までのヴィンテージの中で、お勧めのものを含めてご紹介お願い致します。(T.K.様)


◆ 弟のフランソワさんとのワインの違いを教えてください。(A.K.様)


等々。

また、


◆ 2015年に初めてブルゴーニュにいらした時にドメーヌ・ジャック・カリオンを訪問されたJ.K.様ご夫妻からは、


ドメーヌのこれからのビジョン、新たな変化について。

不安定な天候が続きますが、雨や雹の影響は大丈夫なのでしょうか。ブドウ栽培で苦労した年の事を思い出してエピソードなどを教えてください。




取材VTRに関連して、 


◆ テロワールを通じてワインに現れる「オイリーさ」とは、ワインを飲んだ時の感覚的にはどんなイメージなのでしょうか。(T.K.様)


等々...



すでに40年もワイン造りをしていて、一度として同じ天候の年がなく、だからこそ、無事にブドウを収穫して醸造所に運び込まれた時、一番「ワクワクする」というジャックさん。


このブドウから「今年は一体どんなワインが出来るのか。」そう思うとhyper intéressant !! とおっしゃっていたのがとても印象的でした。


そうですよね。毎年同じだったら、ワインもワイン造りもモノトーンでつまらなくなってしまうと思います。日本人はオフ年でもそれを「違う良さ」として捉えることができる国民性だと思うので、だからこそヴィンテージの違いをそのまま隠さずに表そうとするブルゴーニュのワインを好み、面白いと思う方が多いのだと思います。


また、「弟フランソワ氏のワインとの違い」について、中継でジャック氏が回答された際には私も言及しませんでしたが、以前お会いした時のお話しでは、兄弟で経営していたドメーヌ・ルイ・カリオンの時代から、それぞれ得意分野を担当し、ジャック氏は醸造、フランソワ氏は畑仕事に役割が分かれていたようです。つまり、ジャック氏はルイ・カリオンのワインのスタイルをそのまま引き継ぐ「醸造家」なのです。


醸造を任される者として、ブドウが醸造所に運び込まれる瞬間は、「やる気と集中力が一気に高まる」武者震いに近い感覚があるのだろうと思います。



弟のフランソワ氏は外見からして体格も豊かで表情も柔和で、キリっとしたピュリニーというよりは、ふくよかなワインのスタイルを好みそう。


兄のジャック氏はひとたび決めたら一直線、一切ブレない性格。

人としての印象がそのままワインのスタイルに現れ、この偶然の一致は分かりやすくて面白いです。



「兄弟のワインの違いはどこから来るのですか。」

という質問に、

「基本的には醸造です。」

とジャック氏の率直な回答。

弟のフランソワ氏の方が、収穫のタイミングは遅め、バトナージュ(ワイン熟成中の澱の撹拌)は多め、新樽も多めに使用しているそうで、瓶詰め時にワインが閉じる原因となる亜硫酸の添加量も少なくし、全体として早くから開きやすいワインを造っているとのことです。



兄弟とても仲が良く、長い間力を合わせて父のドメーヌで頑張ってきた二人。

独立したからには夫々の方向を見つけて、子孫に繋げようとしているのですね。



ジャック氏のヴィジョンを復唱するなら、

「ブルゴーニュたるワイン、熟成するからこそ素晴らしいのです。白ワイン造りの手法は、カリオン家では遥か昔に確立しています。そのスタイルを変えるつもりはありません。」


直線的な伸びのあるミネラルを綺麗に生かした、酸の通るワイン。熟成するごとに美しくなっていけるポテンシャルのあるワイン。その二本柱がジャック氏の「血」に脈々と流れていることを再認識させられました。



閉会時には、横浜のワイン愛好家たちを纏めるK.S.様より、

「僕たち飲み手も変わらずに、ワインの声を聴いて、カリオンさんのその年々の味わいを愉しみたいですね!」


との貴重なお言葉をいただきました。



ご参加くださった皆様、本当に有難うございました。一万kmも離れた皆様との対話が、意思疎通が、現地ではとても有難く、嬉しく感じられ、ジャック氏も同じ気持ちでいらっしゃったと思います。(饒舌にお話しされていたのがその証拠だと思います*^-^*)

いつかブルゴーニュにいらっしゃる際にはぜひお声をかけてください。皆様を現地にお迎えできる日を楽しみにしております!





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