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Yuko Bourgogne Raisindor

ドメーヌ・トロ・ボー【醸造特集】黄金の丘コルトン・シャルルマーニュ探訪





秋のコート・ド―ルを舞台にドメーヌ・トロ・ボーの協力を得て開催した【醸造特集】のZOOMオンラインは、10月20日(水)ブルゴーニュ・レザンドール主催/VELTRA社協賛にて無事開催することができました。夜遅くまで現地と繋がって交流の時間を楽しんでくださった皆様に心より御礼申し上げます。


気候の温暖化が問われる中、今年は寒くて雨の多かった年。

収穫開始のタイミングを計るのが難しく、生産者たちは「ブドウが傷むのを覚悟で糖度が上がるのを待つか、ブドウが美しいうちに収穫するか」という選択肢に迫られていました。


ドメーヌ・トロ・ボーでは後者を選択し、ブドウが美しいうちに収穫開始。9月17日、収穫開始二日目に早速 取材訪問。朝、予定していた機材が動かず臨機応変にシステムを組み替えて起動できたばかりで、私が到着したのは緊急事態を乗り越えた直後。運ばれてきたブドウは無事除梗され、選別され、仕込みタンクの中に運ばれていきます。


10月に入ると醸造も終盤に入り、毎日のように仕込みタンクから新酒を引き出していきます。赤ワインはキュヴェごとにプレス、同時にタンクの中で発酵途上の白ワインを樽に詰めていきます。



そんな一連の取材を終え、テーマ毎の数本のオリジナルVTR制作を完了し、いよいよ当日を迎えた朝。


見上げれば空は青く、晴れてはいたけれど、午後の予報は心もとないもの。冬へ移り変わる時節のブルゴーニュは、気まぐれな天気に身を委ねる。光に包まれた極上の美しさを見せたかと思えば、瞬く間にその表情はくぐもり始める。束の間の美しさが多すぎるのです。


10月20日(水)フランス時間14時、日本時間21時、いよいよオンライン開始です!


気温は18度。風は強め。標高300メートルのコルトン・シャルルマーニュの畑の中で日本の皆様と待ち合わせです。



まるでコルトン・グランクリュの丘の相似形のように、肩を並べてこんもりと膨らんだ小さめの丘に、ペルナン・ヴェルジュレスの教会が朝日に向かって立つ眺望。私が大好きな場所です。

てっぺんの森には「希望のマリア様」が立っていて、視界にどこまでも連なっていく畑の向こうまで見守っている。七宝屋根のペルナンの古い教会が、畑と一緒に日に照らされる瞬間が好き。秋にオンラインをするとしたら此処がいいと、ずっと前からそう思っていたのです。


中継開始は空を覆う雲のせいでその色合いの鮮明さは控えめになっていましたが、それでも紅葉の時期としてはベスト、シャルドネは黄色、ピノ・ノワールは赤く紅葉し、葉を落としてしまう前に、ブドウ畑が最も華やぐタイミングでした。



ブドウが収穫された事を悟ったかように、ブドウ樹たちも肩の荷を下ろし、ほろりほろりと葉を枯らせていく。

「一年で一番ホッとできる瞬間はいつですか。」

と生産者に尋ねれば、大抵の人は

「すべての新酒を樽に収めたとき」

と言います。

自然とブドウ農家とが一体になって自然災害を乗り越え、病気の蔓延を乗り越えて、やっと一年の仕事を終え、ホッと安堵し一章を閉じるのが11月。


畑の道の斜面を下りながらそんなお話しをし、時々360度の風景を共有しながら、コルトンの土壌や語源、ブルゴーニュの生産者たちの秋の仕事、イベントなどについてご説明しました。コルトン・シャルルマーニュの下側まで下りると、ペルナン・ヴェルジュレスとアロース・コルトンの村境があり、壁に埋め込まれたサン・ヴァンサンの像(ブドウ生産者の守り神)を拝むことができます。


オスピス・ド・ボーヌの、コルトン・シャルルマーニュの区画に辿り着いたころ、ちょうど日差しが射してきて、空に神々しい表情が現れました。



ここで私はドメーヌ・トロ・ボーに移動します。


皆様には移動時間に合わせて、「コート・ド・ボーヌ」の散策ビデオをご用意しました。


コロナで長らく現地に足を運べずにいる愛好家の皆様に、少しでも現地のドライブ気分を味わっていただけたらと思い、車窓と畑の徒歩の散策を組み合わせて作ってみました。

こんな風景の中を実際にお客様とドライブしたのは2019年が最後。長く続いたコロナの影響と今後の不安も伴って、また冬に向かう私も少し寂しい気持ちです。


撮影はできるだけ紅葉が進むのを待ち、VTRはオンライン一週間前の景色です。それでも紅葉のタイミングとしては少し早かったですが、「黄金の丘たる所以」を追いかけ、夕時のモンラッシェ、サントーバン、ムルソーを巡ってみました。

シュヴァリエ・モンラッシェで今年参加した収穫風景(モンブランの見えた朝)から始まり、3月と6月のオンラインでご紹介した思い出の畑の秋の表情も盛り込んでいます。場所の説明はテロップで入れ、ピアノの音色の「いつも何度でも」の曲に合わせてみました。(FBで繋がっている方には中継後日よりビデオをご覧いただけるようになっています。)




いよいよ本日のテーマ、ドメーヌ・トロ・ボーの5代目ナタリー・トロ氏に面会!



ここで一つお詫びと訂正がございます。

中継中に話題になった「現在何代目になるか」について、私が調べたものは結局間違っており、ナタリーさんがおっしゃった5代目が正しいです。(以下ご参照ください。)



1代目 フランソワ・トロ(François Tollot)氏。1880年、ボーヌのグレーヴとクロ・デュ・ロワを購入し、ドメーヌを創設。


2代目 アレクサンドル・トロ(Alexandre Tollot)氏。オレリー・ボーさんと結婚し、1921年に「ドメーヌ・トロ・ボー」のラベルを瓶に掲げて一部元詰め販売開始。


3代目 ポール(Paul)氏。生産量全てを元詰め。


4代目 フランソワ(François)、ジャック(Jack)、アラン(Alain)、マリー・オディル(Marie-Odile)氏がドメーヌを共同経営。80年代に日本に輸出開始。


5代目 ナタリー(Nathalie)、ジャン・ポール(Jean-paul)、オリヴィエ(Olivier)氏が現在、共同経営。


今年2021年は、元詰め開始からちょうど100周年!

そこで、初版のラベルや瓶、その後のラベルの変遷まで、実物を見せていただくことができました!





1930年のヴィンテージだったので、まだAOC(原産地統制呼称)が敷かれる前。そこで、自分で自分のワインを保証する文句がラベルに記載されています!

Mes vins sont garantis d'origine absolue

ni coupage, ni addition

‘’私のワインは確実に原産地が保証されており、

ブレンドしたり添加物を加えたりしていません。‘’


初版に続く2番目のラベルは、絵画のようなカラフルなラベル。

アートを趣味とする隣人が描いてくれたそうで、現在も家族同士 仲が良いのだそうです。




同時にお客様から「トロ・ボー特有の独特な瓶の形」についての質問がありました。

注ぎ口の細くなった部分がスタンダードの瓶より長く、49㎜のコルクの先端まで密着して真っすぐに支えられること、ガラスの質への拘りもさながら、シリンダーのように真っすぐな筒形ボディでラベルが綺麗に貼れることを理由としているそうです。






そして、とっても心温まる偶然もありました。

お客様の中に、「今日がご結婚一周年記念日」であるとのソムリエさんがいらっしゃり、ナタリーさんが日本語で「おめでとう!」と祝福の言葉を伝えます。



その新婚カップルが記念日に開けて飲んでいらっしゃったのは「コルトン・ブレッサンド・グランクリュ2014年」。

なんとナタリーさんが中継最後に皆様と分かち合うためにご用意くださったのは同じワイン!全くの偶然だったのです。

トロ・ボー ファンのご夫婦と現地生産者とで、同じワインを同時に開けることになり、嬉しい偶然に思わず盛り上がりました。


他にも愛好家からの興味深い質問をご紹介し、アットホームな会話が続きました。



そして本日の【醸造特集】の話題に移り、収穫期から追った醸造の取材ビデオを公開します。


時には現地からナタリーさんと一緒にコメントを入れて、時にはビデオのナレーションをお聞きいただき、収穫されたブドウの受領、除梗・選果・仕込み桶へ入れる一連の作業、醸造終盤の櫂入れ(ピジャージュ)とプレス、発酵中の白ワインの樽詰め、アルコール発酵の進度を知るための比重チェックまで順繰りにご覧いただきました。




また、トロ・ボーのワイン造りに関する哲学と、それを実現するための手腕について、醸造長ジャン・ポール氏と栽培長オリヴィエ氏にインタヴュー。それぞれの思いや努力を語っていただきました。





内容が豊富な上に、ごお客様は夜遅くにご覧になっているため、見逃してしまったり一度見ただけでは記憶に収めづらいこともあるかと思います。そこで私が制作したビデオの断片をダイジェストにして短く纏めたものと、移動時に流したコート・ドールの散歩を後日Facebookに載せております。繋がっているお客様を対象に掲載しておりますので、補完的資料としてブログとともにお楽しみいただければ幸いです。



あっという間に時間は過ぎ、いよいよ中継も最終地点へ。トロ・ボーのコルトン・シャルルマーニュの畑を訪ねます!



その間、皆様にはVTRでトロ・ボーのセラーをご見学いただき、次いで収穫直前の美しいコルトン・シャルルマーニュのブドウの映像をご覧いただきました。



親日家のナタリーさんが「日本の友のために」と畑に持参してくださったのは3本のワイン。

コルトン・ブレッサンド2014年

コルトン・シャルルマーニュ2019年

ショレイ・レ・ボーヌ2017年

です。そのうち赤と白のグランクリュを抜染し、オンライン終了までフリートーキングをしました。



コルトン・ブレッサンド2014年は熟成が進んで少しレンガ色に傾き始め、果実味に複雑さが増しています。柔らかくレースのような味わい。少しスパイシーさを感じさせる枯れゆく赤い薔薇の香り。





コルトン・シャルルマーニュ2019年は、その若さゆえにクマツヅラや菩提樹のようなフレッシュな香り。グレープフルーツのような柑橘の香りも、先の長い将来性を物語っています。






標高340ⅿのトロ・ボーのコルトン・シャルルマーニュ。収穫の朝はモンブランが見えたほどの絶景。ただ、今日はたまたま数日後に秋晴れになる狭間とのことで、風が強く声が届かない事があったり、グラスが飛ばされそうになったり、優雅なワインの試飲...というわけにはいきませんでしたが、時折日の光が雲から筋になって降りてくるように見え、雨の心配もなく予定した内容を全て無事にこなすことができました。


ご参加者の方にもし心残りや聞き取れなかった事などございましたら、レザンドールまでメールをお寄せください。喜んでご返信致しますし、皆様のご感想はいつも生産者と分かち合っています。


「コロナの問題を打開して日本とブルゴーニュで一日も早く行き来ができるようになって、日本の友と再会したい」と切に願うナタリーさん。私も同じ気持ちでおります。ナタリーさん、そしてご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!



次回は12月1日(水)【栄光の三日間】のお祭り特集を予定しています。

オークションやお祭りの取材だけでなく、オテル・デュー館内もガイドします。

ハイライトはオスピス・ド・ボーヌのワインの醸造長の生出演!

ダイレクトにお話しできる貴重な機会になると思いますので、ご興味のある方は是非ご参加ください!(ご予約はVELTRA社のページより。前日までエントリーできます。)   









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